腰痛・坐骨神経痛の漢方治療(3)
腰痛・坐骨神経痛によく使われる漢方薬について。
腰痛・坐骨神経痛は「症状」を表すものですので、原因となる疾患に対して西洋医学的には様々な病名がつきます。東洋医学的には症状から判断できる陰陽・虚実と病因(気血水)が重要になります。もちろん、西洋医学的な診断との整合性も非常に重要になります。
急性で腰痛のみのものは陽と判断されるものが多く、慢性で痛みにしびれ・神経痛を伴うものほど陰と判断されます。
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などは慢性の陰性の腰痛坐骨神経痛では代表的なものになります。
骨量の減少などが指摘されている場合、骨粗鬆性のものも想定して検討しています。
腰痛によく使われる漢方薬
腰椎に対して
・麻杏薏甘湯(麻黄加朮湯) 陽実・急性〜亜急性
・越婢加朮湯 陽実・急性〜亜急性
・防已黄耆湯 陰虚・基本的に慢性だが、防己黄耆湯加麻黄証は急性で陽
・桂枝二越婢一湯加朮附 陰虚実中間・慢性
・桂枝加朮附湯 陰虚・慢性
など
その他
・苓姜朮甘湯 腰以下の冷え
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯 表裏の冷え、四肢末端の冷えが強いもの
・疎経活血湯 血虚、腎虚
・八味地黄丸、六味地黄丸 腎虚(加齢)
急性期から亜急性期ほど、麻杏薏甘湯、越婢加朮湯またはそれに類する漢方薬を使用する機会が多くなります。慢性化したもの、神経痛の症状が強くなるほど、桂枝加朮附湯の関連が多くなります。
患者さんによっては、部分的な急性症状に対する薬方と慢性部分に対する薬方の兼用方が必要な場合もあります。
これらの漢方薬は、腰痛だけではなく関節痛、頚椎症などにも応用されます。
この他、経筋証と呼ばれる筋肉の収縮異常に対する補助剤、骨代謝に必要なカルシウム・ミネラルなども病態や体質を考慮して検討し、ご提案しております。
養生について
痛みが続いているときは無理をしないのはもちろん、コルセットなどを使用して腰部にかかる負荷を軽減しておくことが大切です。
経験上、働き盛りの男性で特に気を付けなければならないのはアルコールです。
深酒はいけません。アルコールは極力控えめにすることが望ましいでしょう。
この他、一般に言われている水中歩行などは、やはり出来る方はしたほうが良いでしょう。
筋力低下を防ぎ、再発防止にはとても有効な方法だと思います。
患者さんによっては、寒冷によって悪化するタイプもあります。
特にトイレの近い人、薄い尿が比較的多く出る人。
この場合は普段は腰から下を冷やさないようにするのも大事だと思います。
その(4)では実際の治療例をご紹介しています。