こころの病気と漢方薬
からさわ薬局で、圧倒的に相談が多いのが心の病気です。
多くの患者さんを検討し、治療してきた実績があります。
心の病気は、心だけではなく必ず身体的な症状として現れます。
代表的なものとして、
- 動悸
- 不眠、中途覚醒、夢見が多いなど睡眠の異常
- 喉のつまり感
このような症状はよく見られます。
例えば、うつ病と不眠でたまに動悸もする、などのように。
この他にも、トイレが近くなる、めまいを伴うなど症状は多岐にわたります。
漢方薬はまずこれらの身体に現れた症状に着目します。
身体に現れた症状の組み合わせから大まかな傾向をつかみ、まずそれらの身体的な症状を緩和する漢方薬を候補に考えていきます。
漢方のご相談にこられる方の多くは病院からお薬をもらっています。
これらのお薬はそのまま飲みながら漢方を補助していくのが大事です。
人間の身体には一定の状態を保とうとする「恒常性」があります。
病院のお薬を飲んでいれば、それに応じた状態が維持されています。
これを急に自己判断でやめるのはとても危険です。
漢方薬を併用される場合も、気になる症状がひとつ、またひとつと取れて充分に自信がついてから、主治医の判断で少しずつ種類を減らしたり、量を減らしたり出来るようになるところを目指しましょう。
あせらないことが大事です。
漢方の世界は古くから心身医学に取り組んできた歴史があります。
今から約二千年前に書かれた東洋医学の古典「霊枢」には、すでに感情の乱れと臓腑の関係が書かれています。
近代では昭和の漢方復興期に学ばれた相見三郎先生(慶応義塾大学医学部出身、満州鉄道病院や慶大の結核療養所などを経て漢方の世界に)が漢方と心身医学について研究され、多くの研究実績を残されています。
からさわ薬局での「心の病気に対する漢方症例」の一例です。
うつ病からの職場復帰
50代の男性。
うつ病の診断で休職されたとのこと。動悸や胃の締めつけ感、吐き気、めまいなどがありました。
医師からは抗うつ剤一種類を投薬されて経過をみていましたが、ご家族のすすめで漢方のご相談にいらっしゃいました。
ご症状をお伺いし、候補に考えた気の上衝に対する発散に気うつに対する薬味を兼ねた漢方薬の証を糸練功で確認し、更に補助剤として停滞したものを巡らせる意味で生薬製剤1種類をお勧めしました。
一進一退はあったものの、動悸や不安発作は早期に消失し、運動などの養生もよく守られ、漢方を併用して約5ヶ月後に医師の勧めで職場に復帰されました。
再発防止のため、医師の投薬が終わるまで漢方を併用され、約1年で漢方治療を卒業され、元気に働いていらっしゃるとのことです。
自律神経症状
からさわ薬局では自律神経症状、神経症の漢方相談は非常に多い。激しい動悸やめまいなどの不安発作を起こすパニック障害、ストレスによる知覚神経の異常が発端となるシビレや痛み、気分が晴れない軽度のうつ症状、情緒不安、喉のつまり、吐き気、不眠症などの睡眠異常、様々な神経症状の漢方治療をしてきた。
今回の症例は、心配症の女性にわりと多い神経症の漢方治療例を紹介。
40代前半の女性。軽いめまいと頭痛があり、なんとなく息苦しくなるが深呼吸が出来ない感じ。仕事が忙しいときなどに動悸が出やすい。吐き気もある。
頭部で自律神経・神経症が現れやすい反応を糸練功でチェック、右手上部から大腸の腑病を確認(※東洋医学の臓腑経絡であり西洋医学の大腸の異常ではありません)。
気と水の停滞に胃腸虚弱を兼ねた漢方薬方が適し、不安発作の頓服として牛黄・麝香の入った伝統薬を補助とする。
1ヶ月ほどで動悸はほとんど気にならなくなる。3ヶ月ほどで寝不足をしたときに軽いめまいがする程度で症状が全般に軽くなってきた。その後、お薬が途切れることもあったが、9ヶ月後には軽い喉のつまりを感じることがあるという程度になり、当初の諸症状は消失。自信をもたれたので、そこで漢方治療を一旦終了した。