腰痛・坐骨神経痛の漢方治療(2)
その(1)からの続きです。
腰痛・坐骨神経痛に関しての情報と漢方治療に対するからさわ薬局の考え方や取り組みなどを紹介していきます。
腰も関節。腰椎の構造を簡単にみてみましょう
いわゆる「背骨」の下のほうの「腰の骨」と呼ばれる部分が「腰椎(ようつい)」です。下の画像のような構造になっています。
腰椎は椎間板(ついかんばん)というクッションの役割をする組織をはさんで椎骨(ついこつ)という骨が5つ積み重なっており、その背面には「椎間関節」という手首やひじと同じように関節が存在します。(模型のため、実際より隙間が開いています)
腰椎の構造(椎間板、椎間関節)
関節痛に用いられる漢方薬がそのまま腰痛にも応用できるのは、腰も椎間関節という関節組織をもっているからです。
漢方の専門書をみても、腰痛に対しては「八味地黄丸」や「六味丸」といった薬方はよく見られるのですが、関節痛に用いる漢方薬を挙げていない本が結構あります。
構造から考えても関節痛の漢方薬だって腰痛の候補に入ることが解ります。
成人の椎間板は最大の無血管組織!
椎骨のあいだにあって、クッションの役割を果たしている「椎間板」。
椎間板の真ん中は、ゲル状の髄核(ずいかく)があり、まさにクッション。その周りを繊維が覆い、骨(椎骨)と接する部分には厚さ1mmほどの軟骨があります。
さて、人間の身体にはくまなく血管がはりめぐらされ、血液の循環によって栄養され、新陳代謝をしています。皮膚がつやつやしているのも血液によって栄養されているからであり、栄養が乏しければ、組織は老化していきます。
椎間板は生まれたときは血管によって栄養されていますが、なんと3歳から10歳くらいまでにその血管は退縮(たいしゅく)してしまいます。
それ以後は、周辺の組織から少しずつ少しずつ栄養をもらいながら、ゆっくり新陳代謝をしていきますが、血管から直接栄養されるのに比べるとぐっと栄養に乏しい状態になります。
特に中心の髄核は低栄養、低酸素の状態。
このため、なんと10代後半から椎間板は老化を始めるのです。
人体の中で最も早く老化(退行変性)を始めるのが椎間板です。加齢は10代から始まっているのです。腰痛や下肢痛をきたす腰椎変性疾患の原因はこの老化によるものと言われます。
髄核は水分をたくさん含んでいるおかげで、ゲル状でクッションの役割を果たします。髄核の水分含有率は、赤ん坊のときは90%、5歳~25歳では80%程度にまで減少し、60歳以上では70%にまで低下します。
髄核が水分を失うことで、椎間板全体の弾力が失われて行きます。
急性部分と慢性部分
実際に患者さんの腰痛を解析すると、治療点が一ヶ所ということはあまりありません。
急性の腰痛では、筋肉の過剰収縮と考えられる東洋医学の「経筋病」+腰椎部分の「急性(陽性、炎症性)部分」の治療点の組み合わせが多く見られます。
慢性の腰痛、特に坐骨神経痛を併発してくる椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などになると、「経筋病」+腰椎部分の「慢性(陰性、修復機能)」に関わる治療点の組み合わせが主となりますが、中には急性〜亜急性と見られる治療点も混在していることがあり、この場合は「経筋病」→「急性〜亜急性部分」→「慢性部分」の3点の治療により改善する場合があります。
骨粗鬆性の腰痛
女性で骨量の減少が指摘されている場合、骨粗鬆性(こつそしょうせい)の腰痛と考えられるものもあります。
この場合は、慢性腰痛の漢方に若干の工夫をし、骨代謝を活発にしなくてはなりません。
皮膚が約4週間で新陳代謝するのと同様に、骨もゆっくりと新陳代謝をしています。だいたい2年〜2年半くらいで骨も入れ替わると言われており、身体の中でいちばん新陳代謝が遅い部分です。カルシウムをいくら飲んでも、骨代謝を活発にする工夫をしなくては、なかなか改善しないと考えられます。
その(3)では、実際によく使われる漢方薬や養生法についてご紹介しています。