漢方の症例
突発性難聴が早期に改善した男性
50代の男性。突発性難聴で左耳がガーガー鳴り出した。以前に、からさわ薬局でお買い物をされて当薬局をご存知だったらしく、お電話をいただいたが電話も一方的にお話されるだけでこちらの話はうまく聞き取れない。とにかく来ていただくことにしました。
発症する前に大勢の前で話すことがあり、非常に緊張した。来局時はやや顔面が紅潮した感じで、とにかくひどい音が鳴り続けているとのこと。
左耳を糸練功でチェックすると非常に強く異常を感じる。左耳で捉えられる異常は、ストレスの影響を受けやすい五志の憂の反応穴にも重なる。
経別脈診部をチェックして腎の陽証と判断し、本間棗軒の経験方である二薬方の合方を適方と判断し、それぞれの配合比率をチェックして2週間分をお出しした。
2週間後、どの程度治まってくれたものかと心配しながらご来局を待った。
来局されると、2週間前のあの緊迫感はなく、こちらの言葉もすっと通じる。
聞けば、数日で耳鳴りが減少し、現在は「もう治った気がします」とのこと。
再度、左耳を糸練功でチェックすると、確かに勢いがかなり弱くなっていました。
念のため、再発防止のレベルまで漢方を飲んでおいてくださいね、とお願いし、薬方の配合比率をチェックして2週間分をお渡しした。
後日連絡があり、「もうまったく気になりませんので、しばらく様子を見ます」とのこと。
通常、病院に長く通院されて症状が一進一退の場合に漢方相談に訪れる患者さんが多いのですが、この男性は発症後数日でご来局されました。
初期に調べると、ご病気も浅かったせいでしょうが、想像以上に早い回復をみられることを経験しました。
一般的にはストレス(五志の憂)の反応との関係を重視し、気の上衝に対する薬方を主に用いていますが、時に耳管炎様の反応とみられるものが混在している場合もあり、その場合は浅田宗伯翁が耳聾に用いた経験方との組み合わせで考えることもあります。
ご病気の発症から時間がたっていたり、潜在的な長期のストレスとの関係がある場合、なかなか漢方でも治るまで時間がかかる場合もございます。